事業管理者のつぶやき
Chapter88.背筋をのばして
市立芦屋病院事業管理者 佐治 文隆
わが国の少子化の原因の一つに、「結婚しない(結婚できない?)」男女が増えたことが挙げられます。昔はセミプロ的なお見合いおばさんや親類のお節介なおばさんが結婚の世話をしていましたが、最近ではインターネットの出会い系サイトや事業としての結婚仲介業がこれに代わってきています。しかし、できるだけ自然な形で異性と知り合いたいと思うのは常なのか、合コン(合同コンパ)がけっこう出会いの場になっているようです。私たちの若い頃は合ハイ(合同ハイキング、今や死語です)がそれでした。もう少しオシャレな場はダンパ(ダンスパーティ)で、こちらは公然とペアを組めるのですから人気がありましたね。とくにクラブ活動の資金集めで開く医学部主催のパーティはパー券(パーティ券)を売るのに苦労しませんでした。
ダンスパーティでダンスが踊れないと話になりませんから、私もダンス教室で社交ダンスを習いました。教室で教えるのはいわゆる競技ダンスの先生で、私のような不純な目的の者であっても、ブルースから始まり、スローフォックストロット、クイックステップ、ワルツ、ルンバ、チャチャチャ、ジルバ等と進みます。私はとても到達できませんでしたが、上級の究極はタンゴです。タンゴは南米アルゼンチンで生まれ、その後本場アルゼンチンで発達したアルゼンチン・タンゴとヨーロッパで発達したコンチネンタル・タンゴの2種類があります。社交ダンスのタンゴは後者のコンチネンタル・タンゴです。
アルゼンチン・タンゴの伝説的ペア、マリア・ニエベス、ファン・カルロス・コペスを描いたドキュメンタリー映画「ラスト・タンゴ」が今夏公開されました。14歳と17歳で知り合い、半世紀にわたってパートナーだった二人の愛と憎しみ、葛藤をインタビューで明らかにしていきます。それにしても全編を流れるタンゴ・ミュージックと華麗なダンスには目を奪われます。若いときはもちろんのことですが、80歳になっても華やかさと艶やかさを失わないマリアには驚きます。パートナーとの絡みも年齢を感じさせません。その源の一つは、姿勢にあると気付きました。生涯を「見せる」「見られる」立場のダンサーであり続けたせいでしょうか。
私の幼馴染に元ファッションモデルのA子ちゃんがいます。経験を生かして、ビジネスマン対象にテーブルマナーやトータルコーディネートの会を主催する一方で、シニア世代にいつまでも生き生きとして過ごすための講演活動をしています。日野原重明先生が会長として発足した「新老人の会」では「さっそうクラブ」講師を担当、美しい歩き方と素敵な立ち居振る舞い方など「歩く、着る、話す、装う、飾る、食べる」といったオシャレからマナーまでを楽しい話術と実演で伝えています。とくに歩き方にはうるさく、さすがファッションモデルだっただけに古希に近い今も背筋がすっと伸びて美しいスタイルです。たまに会うことがあると、「さじくん、歩き方よ!背筋をのばしてね!」と言われます。
(2016.10.1)