広報誌HOPE Plus

事業管理者のつぶやき

Chapter85.七をめぐって

市立芦屋病院事業管理者 佐治 文隆

2016年も折り返し点を過ぎ、7月を迎えました。数字の「7(七)」は単なる素数の一つに過ぎませんが、私たちにとって特別な意味を持つようです。身近なところでは、一週は日曜から始まり土曜に終わる7日です。ユダヤ教やキリスト教の聖典といえる旧約聖書の「創世記」で神は天地創造に6日を要し7日目に休息をとったと言います。仏教においても「三」とか「七」は意味のある数字のようで、金、銀、瑠璃、玻璃などからなる七種の宝「七宝」を重用します。死者を弔うにも初七日、四十九日といずれも七が関係します。日本で信仰されている福をもたらす神は「七福神」です。グリム童話「白雪姫」に登場するのは七人の小人です。どうも洋の東西を問わず、七は区切りの良い数字のように思えます。

七色といえば虹の色で、端から順に赤・橙・黄・緑・青・藍・紫(せき・とう・おう・りょく・せい・らん・し)と学校で覚えたものです。これはイギリス人のニュートンが唱えたことから始まったようで、アメリカやドイツでは6色、中国では5色とされ、日本でも5色といわれた時代がありました。科学的には太陽光のスペクトルは連続しているので、虹は無限の色から構成されています。便宜上七色とされたのはやはり七にこだわりがあったのかもしれません。また西洋音楽で使われる全音階、ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シも七音音階です。地震続きの日本で不本意ながらすっかりおなじみになった「震度」ですが、これもわが国では最大震度は7です。実際の気象庁震度階級は震度0から7の各段階に、震度5と6はそれぞれ弱と強に細分して10段階で表示しています。なぜ最大震度を10とせず7にしたのかはよくわかりません。ちなみに欧米やアジアの国々で採用されている地震の震度階級は、名称や基準に違いはありますが12段階表示が多いようです。

七には、「無くて七癖」「七難八苦」「色の白いは七難隠す」などあまりいい意味で使われないこともあります。「無くて七癖」は「あって四十八癖」と続き、この場合の「七」は「無くて」の「な」との語呂合わせです。また七や四十八の数字は単に印象を深めるための数でしょう。一方、「七難」は仏教用語で経典によって違いがありますが、例えば法華経では火難、水難、羅刹難(悪鬼による災難)、刀杖難、鬼難、枷鎖難、怨賊難を指します。また色白が隠す七難は具体的では無く、多くの欠点と解釈されます。「七難八苦」の「八苦」は生、老、病、死、愛別離苦、怨憎会苦、求不得苦、五陰盛苦を指し、「七難八苦」で世の中のありとあらゆる苦難を意味します。

七を交えたことわざには結構含蓄の深いものもあります。「仲人七うそ」でいわゆる仲人口にのって見合いをした男女、「浮世は衣装七分」で中身より見た目で決めて所帯を持ちます。ところが女はなかなかしたたかで、「七人の子をなすとも女に心を許すな」です。しかし男も男で「七つ下りの雨と四十男の道楽はやみそうでやまない」のです。しょせん人生は「七転び八起き」ですね。ここは「伊勢へ七たび熊野へ三度」と信仰に頼るもよし、「朝茶は七里帰っても飲め」と健康に留意するのも良いでしょう。保険業界では、がん、心疾患(急性心筋梗塞)、脳血管疾患(脳卒中)、高血圧疾患(高血圧症)、糖尿病、肝疾患、腎疾患を七大生活習慣病と称しています。生活習慣を整えて、健康寿命を伸ばしましょう。

(2016.7.1)