広報誌HOPE Plus

事業管理者のつぶやき

Chapter41. 芦屋のぼん?

市立芦屋病院 事業管理者 佐治 文隆

50代からゴルフを始め、いっこうに上達しなくて、ハーフでエージシューターの体たらくです。そんなヘボ・ゴルファーの私ですが、この夏にわが国のゴルフ発祥の地でプレーをする機会を得ました。1901年(明治34年)にわずか4ホールからスタートした神戸ゴルフ倶楽部で、六甲山上にあります。行ったことはありませんが、イギリス片田舎のカントリークラブもかくやと思わせるレトロなクラブハウスに迎えられ、「どれでも空いているロッカーを」と鍵のないロッカー(口には出さずに「lockされなくてもlockerか」とつっこみを入れながら)に案内され、そのアットホームな雰囲気にまず感激しました。さすがイギリス人アーサー・ヘスケス・グルームが仲間と語らって創っただけあって、渡されたスコアカードに載っているローカルルールはすべて英文でした。

彼らが本場を思い出しながら人手で造ったコースは、アップ・ダウンの激しいパー61、約4.000ヤードで、ロングホールはありません。アウト・インともに五つずつあるショートといえども、狭い砲台グリーンへの打ち上げなどタフなコースです。あいにく前半は霧に包まれて指示された方向へ打つだけでしたが、霧の晴れた後半よりスコアが良かったのはどういうことでしょう? カートのない山岳コースなので、クラブは10本限定で軽量バッグに詰め替え、アルバイトの大学生が担いでくれます。しかし、実際に使うのは私などパターを含めて4、5本でしたが、「やはり14本ないとスコアがでない」と言うお客もいるということです。プロ並みにピンポイントに打てる人なのでしょう。ともあれ、気のおけない友人と涼しい山上で楽しく過ごせた夏休みでした。

私の大学の先輩で、緩和ケア医療の第一人者である柏木哲夫先生も、私同様56歳からゴルフを始めておられます。私よりはずっと上手ですが、それでもプレーにまつわる悩みはつきないようで、お得意の川柳で紹介されています。著書「50代からはじめるユーモア ―ゴルフと川柳―」(青海社)には、

  • 午後にかけ 次回にかけて 今日も終え
  • なんでだろ あんなに細い 木にあたる
  • 「8」か「9」か 思った時は まず「9」や

いずれも思い当たることばかりです。自虐的なものばかりではありません。紳士のスポーツであるゴルフでも本音と建て前は違います。

  • OBの 仲間が出来て ほっとする
  • 唯一の 希望相手の ミスパット

そう言えば、「他人の不幸は蜜の味」と言ったゴルフ仲間がおりました。

芦屋ネタも載っていました。ミドルホールに2オン、パットしたボールはラインにのったものの、ピンの3センチ手前でストップ。すかさずかかる声が「芦屋のぼん」だそうです。そのこころは裕福に育った「ぼんぼん」は「少し足りない」ですって。

夏の終わりに、特別講演に柏木哲夫先生をお招きして「がんフォーラム2012」を開催しました。メインテーマを「緩和ケアを学ぶ」とし、柏木先生には「緩和ケアとユーモア」のタイトルで、たとえ死の床にあっても「愛と思いやりの現実的な表現」としてユーモアが必要であることを語っていただきました。深刻なテーマなのに、ここでも川柳を交えて会場を笑いの渦に巻き込むなど、いつもながらの話術に酔いました。

  • 脳外科に 頭の切れない 医者もいる
  • 精神科 自分もおかしい 医者がいる
  • 眼科医に 目先の見えない 人もいる
  • 耳鼻科医に 鼻がきかない 人もいる
  • 腹部外科 腹を割らない 医者もいる

など、一連の医者ネタに大きな笑い声が挙がったのは、医療関係者からでしょうか。

  • お守りを 医者にもつけたい 手術前

患者の実感でしょうね。

  • 寝て見れば 看護師さんは 皆美人

いえいえ、芦屋病院の看護師は立って見ても皆美人ですよ。
患者も職員もユーモアの通じる病院であり続けたいと思います。

(2012.11.1)