名誉事業管理者(前事業管理者)のつぶやき
Chapter202.ヒューマノイド NEW
市立芦屋病院名誉事業管理者 佐治 文隆
コシノヒロコ、ジュンコ、ミチコ三姉妹が主催する「THE Uの会」に参加しました。元々は姉妹の母で、NHK朝ドラ「カーネーション」のモデル小篠綾子(コシノアヤコ)さんが40年以上前に発足させた異業種交流会です。綾子さんの没後、姉妹が復活させた遊び心満載のパーティで、「U」は「遊、友、YOU」などにも通じる大人の遊び場です。服飾デザイナー主宰だけあって、フォーマル・ウエア着用のホテル会場は、艶やかなイブニングドレスや豪華な着物姿の女性で溢れ、華やかな雰囲気に包まれています。私のテーブルの隣席は、京都の有名神社の宮司夫妻と関西の某アパレル企業の社長夫妻でした。 ハイアット・リージェンシー京都の手の込んだフルコースディナーを味わいながら、数々のショウやイベントを楽しみました。マジシャンが各テーブルを訪れて、目の前でみごとなテクニックを披露してくれます。ショウの中でも印象的だったのは、東京都出身のトランスジェンダー・アーティスト、マリアセレンでした。ソプラノとテノールを巧みに使い分ける両声ボーカルで、私は初めて聴きました。ヒロコさんが畳一畳大のキャンバスに即席でデザイン画を描いて、オークションにかけるなどのイベントも会場を盛り上げました。このパーティには会の創始者である「おかあちゃん」ことアヤコさんも参加していました(!)。なんと会場のマルチスクリーンから「おかあちゃん」の画像と音声が流れるのです。AIで創られたものでしょうが、実物そのものの大阪弁と姿で言いたいことを言うのですから驚きです。まだ二次元画像ですが、三次元の立体で現れるのも時間の問題でしょう。
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立体ロボット、ヒューマノイドを扱った秀作映画が「箱の中の羊」で、是枝裕和監督が近未来を舞台に描くカンヌ国際映画祭コンペティション部門出品作です。建築家音々(綾瀬はるか)と工務店社長健介(大悟)夫婦が二年前に事故死した一人息子翔(かける)を忘れられず、ヒューマノイドの翔(桑木里夢)を購入します。手放しで喜び溺愛する妻と異なり、夫は所詮ロボットと納得がいかず、翔を受け入れることができません。この辺りの父親の感情は、やはり是枝監督製作「そして父になる」(2013年)の福山雅治演じるエリートの父親を彷彿とさせます。この作品では、6年間育てた息子が実は病院の新生児取り違えだと判明し、小さな電気店で粗野な親に育てられた実子と交換することになります。DNAのつながりは理性では納得していても、両家の環境の格差は大きく、福山雅治の苦悩と葛藤が赤裸々に描かれました。「箱の中の羊」の父親大悟も翔に徐々に生前の面影を見出して行き、擬似家族が復活したように見えてきます。しかしヒューマのイドの翔も身体こそ変化は有りませんが、AIによって成長していくのは生身のヒトと同じで、個性が生まれて来ます。作品は私達に近未来に起こりうる大きな課題を突きつけているようです。
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平野啓一郎原作の小説「本心」(文藝春秋 2021年)は、「自由死」(安楽死)が許可されるようになり、仮想空間上に任意の人間をつくる技術「バーチャル・フィギュア(VF)」が実用化された2040年代の日本を舞台にしています。自由死を選択した亡き母親の本心を求めて、母のVF作製を依頼し、母を蘇らせた青年が主人公で、2024年には石井裕也監督により映画化もされています。AIで学習したVFの母親と対話を重ねる青年の葛藤から、読者はテクノロジーで支配される世界の限界と現実の生身の人間関係にみる愛を知ることになります。
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アメリカの作家であり、生化学者でもあったアイザック・アシモフが1950年に提唱した「ロボット工学三原則」は、ロボットが従うべき安全のための倫理的法則として、SF小説の世界では憲法のように取り扱われています。その第一条は、「人間に危害を加えず、危険を見過ごしてはならない」、第二条は、「第一条に反しない限り、人間の命令に従う」、第三条は、「前二条に反しない限り、自己を防御する」です。未来のヒューマノイドたちも、これら三原則を守ってくれるのでしょうか。

(2026.6.10)