広報誌HOPE Plus

事業管理者のつぶやき

Chapter167.男女共同参画

市立芦屋病院事業管理者 佐治 文隆

 5月5日は「こどもの日」ですが「端午の節句」と重なり、男の子のお祝いの日というイメージが強く、主役は男の子になりがちです。「端午の節句」は「菖蒲の節句」とも言い、「菖蒲」が「尚武」に通じることから、男子を後継とする武家社会で定着していったためといわれます。男尊女卑は日本に限らず欧米各国でもみられてきて、これを是正し男女平等(gender equality)の実現を推進する動きは1世紀以上前から続いています。

 国連では国際婦人年の1975年の3月8日以来、この日を「国際女性デー」と定め、さまざまな分野で女性の功績を祝う行事が行われます。元はといえば欧米で国際的な社会主義運動が盛んになり、女性解放の機運が高まった20世紀初頭のロシアで、女性の権利と国際平和を訴えた女性たちのストライキが、ユリウス暦1917年2月23日(グレゴリオ暦3月8日)に起こり、2月革命で女性参政権が得られたことに端を発しています。この日はまた「ミモザの日」とも呼ばれ、ミモザの花の色の黄色がシンボルカラーに使われます。

 今年三月神戸では”International Women’s Day with Men”「国際女性デーを男性と共に」が開催されました。ミナト神戸にふさわしく在関西の各国領事など外交官ご夫妻たちも多数参加される国際色豊かな会となりました。昨年は伊籐芦屋市長がゲストスピーカーとして、女性首長の経験などを話されましたが、今年は在大阪イタリア総領事マルコ・プレンチぺ氏と在大阪イギリス総領事キャロリン・デイビッドソン女史が基調講演をされました。プレンチぺ氏は「ミモザの日」がイタリアに由来することを紹介されました。ミモザは3月に小さな花をたわわに咲かせる、鮮やかな黄色が特徴の花で、もともとイタリアでは男性から女性にミモザの花束を贈る習慣があったそうです。これがイタリアにおける“FESTA DELLA DONNA”(女性の日)と結びついて、女性に感謝の意を込めてミモザの花束を贈るようになり、さらに世界中にこの風習が拡がって、国際女性デーを象徴する花としてミモザが知られるようになりました。

 一方デイビッドソン女史の講演は聴衆を驚かせる印象的な内容でした。デイビッドソン女史は夫婦共に外交官で、母国イギリスでは共働きで家事も平等にシェアしておられました。夫がザンビアに赴任した際に別居は嫌だし、かと言ってキャリア外交官の職を捨てるのも潔くしないとして、夫婦で4ヶ月ごとにイギリス最高弁務官の職務を交代し、育児と職務を分担されたそうです。これを認めたイギリス外務省もすごいですし、承認したザンビア政府も称賛に値します。もちろん世界初めてのケースで、2008年から2012年にかけて続いたといいます。わが国であったらどうか、考えるまでもないでしょう。夫婦共にキャリアの道から外されるのは自明です。他国の外交官が承認を求めてきても、「前例がない」と言って断りそうです。その後2015年から2019年にかけて、グアテマラとホンジュラス大使の職務を分担し、外交職務と育児を夫婦間でシェアしてきたといいます。夫君がリタイヤされた現在はイギリス総領事として大阪で公務に従事されています。

 講演終了後のテーブル・ディスカッションでもデイビッドソン女史の話題で大きく盛り上がりました。私は個人的には日本のお役所に「男女共同参画推進室」等の部署が存在する限り、真の意味での男女平等は存在しないと思っているのですが、フランス総領事ジュール・イルマン氏が「国際女性デーがなくなる時こそ男女平等が実現するときだ」と言われたので、わが意を強くしました。ともあれ最後は戦火のウクライナを逃れて神戸に避難しているウクライナのバレリーナによる美しいバレエを鑑賞してお開きになりました。

(2023.5.1)