芦屋病院コラム
熱中症の予防と対策
救急外来 看護師 柳 良美
1 熱中症とは
熱中症は、気温が高くて湿度が高い環境にいるときに、体温調節がうまくいかないために様々な症状がおこることです。
総務省消防庁の統計によれば、2023年5月から9月の熱中症による救急搬送件数は91,467人で、高齢者が最も多く、次いで成人でした。
2. 発生場所は
発生場所は、住居が最も多く36,541人(39.9%)、次いで道路15,186人(16.6%)、公衆 (屋外)11,742人(12.8%)、仕事場①9.324人(10.2%)の順となっています。発生場所として住居が多くなるのは、65歳以上の高齢者の発生が多いからと言われています。
3. 予防と対策
予防と対策は、「水をとる(Fluid)」「冷やす(Icing)」「休む(Rest)」「119番(Emergency Call)」があります。英語の頭文字をとってFIREといいます。
FIRE
水をとる(F)
時に救急外来を受診される方で、「水分は摂っていました」と言ってミネラルウォーターやお茶を摂っていたという方がおられますが、人間の体の中の水分には塩分が含まれています。汗をかくと塩分も喪失するため、塩分も同時にとる必要がありますのでご注意ください。
冷やす(I)
室内ではカーテンなどで直射日光を防ぐ、扇風機やエアコンを利用するようにしてください。また衣服などもゆったりとしていて風が通りやすく体温を下げてくれるものを選んでください。
応急の手当として、全身に水をかけたりする方もおられますが、衣服が濡れていると体温が戻った後、逆に体温を必要以上に奪ってしまうこともありますの、冷たいもので部分的に冷やすか、濡れタオルで拭く程度にとどめておくのが良いと思います。
休む(R)
外出するときは熱い時間をできるだけ避け、日陰を選んでください。体調が悪いときは無理をしないでください。
119番(E)
症状が強くて動けないときや、めまい、失神、意識障害、けいれん、せん妄など、意識の問題がある場合は救急車を呼んでください。生あくびは意識障害の前兆のことがありますので周りにいる方は注意して見守ってください。体は熱いのに顔色が悪い手足が異常に冷たい場合は脱水症状が進行していることが考えられますので、救急車を要請してください。
年々気温の上昇が指摘され最高気温の更新が続いています。日本の夏は高温多湿であり、たとえ気温がさほど高くなくても湿度が高いと熱中症になる可能性があります。湿度の高い環境下では汗が蒸発せず人間の体温調節がうまく働かないからです。
真夏の屋外で活動される方やご高齢の方は熱中症が重症化する可能性があり、命にかかわることがありますので、予防が大切です。