広報誌HOPE Plus

芦屋病院コラム

骨粗鬆症~治療の大切さ

整形外科 名和 厳

骨粗鬆(こつそしょう)症とは骨に含まれるカルシウムの量が少なくなり、骨がもろく骨折しやすくなることで、背骨や大腿骨周辺の骨折は寝たきりに直結。 原因は閉経後の女性ホルモンの減少によるものが多く糖尿病や腎臓疾患、低栄養に伴うものや、その他原因不明のこともあり、男性にも見られます。

骨粗鬆には3つの恐怖
1. 症状がほとんどなく見つけにくい
2. 骨折は高齢者の身体機能を低下させ寝たきりの大きな原因になる
3. 本人が健康だと錯覚して甘く見てしまう
たとえば、治療薬には歯科治療との相性が悪いことがあるのですが、骨折の経験がないかたのほとんどは歯科治療を優先させてしまいます。

【骨粗鬆の検査】
① 骨密度検査
骨に含まれるカルシウムの量(骨密度・骨塩量)を定量します。 当院ではごく少量の放射線による国際基準の測定(DXA法)で計測しています。 測定部位は骨折を起こしやすい腰椎・大腿骨の股関節周辺部分です。 骨密度が若い人の70パーセント(YAM70)以下の場合骨折しやすいといわれており治療が必要です。
② 採血検査

全身のカルシウム代謝を調べます。骨を造る作用(骨形成)と骨を溶かす作用(骨吸収)のバランスや、骨代謝ホルモン・マーカーの数値を調べます。

【治療】
③ 治療薬の選択
検査結果や年齢・生活状況・骨折リスクをもとにして、治療薬を選択します。
④ 治療薬の種類(効き目の強いものから)
作用として骨吸収抑制(溶かされるのを防ぐ)タイプと骨形成促進タイプがあります。骨吸収抑制タイプは歯科治療に注意(インプラント手術、抜歯の際一時休止)が必要な場合があります。


1. 注射薬
●ロモソズマブ 月1回 1年間
骨形成促進・骨吸収抑制効果両方の作用があり最も強力な薬ですが、適応条件が限定されてやや高価 背骨によく効く 心疾患・脳疾患既往の場合相談が必要
●デノスマブ 半年に1回 数年間
骨吸収抑制効果が強く内服の骨吸収抑制剤より効果が高い 治療継続しやすい
●副甲状腺ホルモン剤 週1回から2回または毎日の自己注射
骨形成促進作用だけがあり背骨によく効く 歯科治療との相性が良い 吐き気などの副反応が出ることがある
●ビスホスホネート製剤 毎月1回注射 数年間
骨吸収抑制作用があり歴史の長い製剤です
上記3つの製剤より副反応・副作用が少なく継続しやすいが効果はやや弱い

2. 内服薬
注射薬に比べると効果は穏やかです
●ビスホスホネート製剤 骨吸収抑制 週1回から月1回内服
エストロゲン受容体調整薬 閉経後に低下した女性ホルモンの働きを助けます 血栓症の副作用があります
●ビタミンD,K カルシウムなど 補助的に使用します

当院では骨折予防のため毎週火曜に骨粗鬆外来を開設して診療しています。 また、骨折受傷のさいに迅速に手術ができる体制をとっていますので、不安のある方は地域連携室にご相談ください。