広報誌HOPE Plus

芦屋病院コラム

加齢と摂食嚥下障害 –最近、むせることが増えていませんか?–

リハビリテーション科 今井 教仁

60代から始まっている「飲み込む力」の低下

毎日の診療の中で、「最近、食事中にむせることが多くなった」という声をよく耳にします。実は、在宅で生活する高齢者の5人に1人が、75歳以上では4人に1人以上が、飲み込みに何らかの不安を抱えているという報告があります。

気づかぬうちに進行する「老嚥(ろうえん)」

加齢によって飲み込む力が低下した状態を「老嚥(ろうえん)」と呼びます。 我々の研究によると、この機能低下は実は60代から徐々に始まっていることがわかっています。老眼や難聴と違い、自覚症状がはっきり出にくいため、知らないうちに進行してしまうのがこの障害の注意すべき点です。

まずはセルフチェックを!

ご自身の状態を客観的にチェックしてみましょう。 簡単な質問票「EAT-10」で、合計が3点以上の方は、一度専門医への相談をおすすめします。
EAT-10 チェック票(農林水産省PDF)

「飲み込む力」を維持する3つのトレーニング

筋肉は何歳からでも鍛えることができます。特に加齢の影響を受けやすい筋肉に対して、ご自宅で今日から始められるトレーニングをご紹介します。

①舌筋のトレーニング(舌抵抗訓練)
  • 効果: 舌の筋肉を鍛え、食べ物を喉へ送り込む力を強めます。
  • 方法: アイスのスプーンなどを舌の表面に当て、抵抗を感じるように舌を上へ押し返します(図1)。
  • 図1舌抵抗訓練

②咽頭収縮筋のトレーニング(前舌保持嚥下法)
  • 効果: 舌の付け根や喉の壁の筋肉を鍛え、食べ物を喉の奥までしっかり運びます。
  • 方法: 舌を少し出し、上下の歯で軽く挟んだまま「ゴクン」と唾液を飲み込みます(図2)。
  • 図2前舌保持嚥下法

③舌骨上筋群のトレーニング(CTAR)
  • 効果: 喉頭(喉仏)を持ち上げる筋肉を鍛え、食道の入り口を広げやすくします。
  • 方法: 柔らかいゴムボールなどを顎の下に挟み、グーッと押しつぶすように顎を引きます(図3)。
  • 図3 CTAR

食べる楽しみを、いつまでも

食べることは栄養の摂取だけでなく、家族との団らんや人生の楽しみでもあります。「最近、飲み込みにくいな」と感じたら、それは身体からの大切なサインかもしれません。日頃から舌、喉の筋肉を鍛える運動を取り入れ、予防を心がけましょう。当院では嚥下外来による診療を受け付けております。不安なことがあれば、お気軽にご相談ください。