広報誌HOPE Plus

芦屋病院コラム

FUS、非肥満2型糖尿病、5型糖尿病

糖尿病・内分泌内科 紺屋 浩之

 外来診察をしていて、肥満型の糖尿病患者さんだけでなく痩せ型の糖尿病患者さんを診察することがよくあります。このようななか2025年4月日本肥満学会は、18歳から閉経前の女性における低体重低栄養の状態に対する新たな疾患概念として、「女性の低体重/低栄養症候群(Female Underweight/Undernutrition Syndrome:FUS)」を提唱しました(表1)。
 成人女性が低体重・低栄養の状態に陥ると、脂質異常症、骨密度低下、耐糖能異常、月経周期異常など、様々な健康リスクや症状を生じることが近年明らかになっており、FUSから非肥満2型糖尿病への進展が懸念され、高齢になるとサルコペニアフレイルへの進展も危惧されます。しかしFUSは摂食障害や甲状腺機能亢進症や悪性疾患などによる二次性の低体重は除外して検討することになっています。
 また2025年4月、タイ・バンコクで開催された国際糖尿病連合(IDF)の世界糖尿病会議で新たな糖尿病の分類「5型糖尿病(Type 5 Diabetes)」が公式に認定されました。
 5型糖尿病は、長期的な栄養不足によって膵臓の発達が妨げられ、インスリンの分泌能力が著しく低下する糖尿病です。特に小児期や思春期の栄養不良が原因となることが多く、これまで1型や2型糖尿病と誤って診断されていたケースも少なくありません。この病態は、SIDD(Severe Insulin-Deficient Diabetes:重度インスリン欠乏性糖尿病)として知られ、アジアやアフリカなどの低・中所得国を中心に、全世界で2,000万〜2,500万人が罹患していると推定されています(表2)。5型糖尿病に該当する病態は、70年以上前から貧困地域で観察されていたものの、明確な診断基準がなく、1型や2型として処理されてきましが、近年、米国アルバート・アインシュタイン医科大学のMeredith Hawkins教授や、インドのNihal Thomas教授らによる研究により、独特な代謝プロファイルが明らかになり、他の型とは本質的に異なる疾患であると認識され、今回の国際的な分類に至りました。
 いまのところ日本糖尿病学会(JDS)やアメリカ糖尿病学会(ADA)は、「5型糖尿病」を正式な診断名として採用していませんが、高齢患者さんや摂食障害患者さんにおいて、栄養不足と糖代謝異常が関与する病態が注目されつつあり、「糖尿病=過栄養」といったイメージから、「栄養不良による糖尿病」という新たな概念への理解が求められ、食事療法や治療方針も、患者さんの栄養背景を含めた個別対応が一層重要になると考えられます。
 以上より戦中、戦後の食糧難の時代を経験した世代や若い時から痩せ型の女性患者さんにとってFUS5型糖尿病は要注意であり、過度な食事制限は健康障害のリスクとなる可能性がありますのでご注意ください。

表1

熱中症による救急搬送件数

表2

熱中症による救急搬送件数