広報誌HOPE Plus

事業管理者のつぶやき

Chapter133.旬の食べ物 NEW

市立芦屋病院事業管理者 佐治 文隆

この春から初夏にかけて緊急事態宣言が発令され、少なからずの国民が外出を自粛して、余儀なく自宅で巣ごもり状態に陥りました。デパート、映画館をはじめほとんどすべての店舗が時間短縮や休業に追い込まれた中で、通販や宅配は平時より需要を伸ばしたといいます。それなりの料亭やレストランもテークアウトのコース料理を準備するなど、自宅にいても一流料理人の味が楽しめなくもなかったのは不幸中の幸いでしょうか。しかし、お店では味だけでなく雰囲気も含めてもてなされますし、ましてやお店のように温かいものは温かく、冷たいものは冷たく、食事の進み具合に合わせて手際よく出てくるわけでもありません。贅沢なようですが、いくら高級料理でも毎日のように続けば飽きもくるでしょう。そこで普段は厨房に立たなくても、この機会に手料理に力を入れてみるのも一興です。

幸いこの季節、旬の食材には事欠きません。材料本来の持ち味だけで十分美味しいものがあるのは四季に富むわが国のありがたいところです。まずビールのお供、枝豆はどうでしょう。山形のだだ茶豆、新潟の茶豆、そして近場の丹波黒豆の枝豆です。新鮮な枝豆は美味しいだけでなく、認知症予防に有効(?)なレシチンも豊富です。新物といえば蓮根も出始めます。「蓮は泥より出でて泥に染まらず」と美しい花で目を楽しませる蓮は、その地下茎の蓮根で舌も楽しませてくれます。あのシャキシャキした独特の食感はたまりませんが、日本と中国などアジアの一部の国でしか食されないそうです。酢とは相性がよく、空気に触れると黒ずむので酢にさらせて生の色を保たたせます。甘酢に漬けた酢蓮根は歯ざわりも抜群です。蓮根のてんぷらもいいですね。

夏野菜といえば、茄子、オクラ、シシトウ、新生姜なども出盛りです。オクラと並んでネバネバ野菜としてモロヘイヤも人気があります。どちらもアンチエイジング効果があるβカロテンが含まれ、ミネラルも豊富です。植物繊維に富むことから整腸作用もあり、生活習慣病の予防も期待できます。オクラは刻んでサラダなどのトッピングに、モロヘイヤは茹でて水気を切り、和え物や麺類のトッピングにするなど用途はいろいろです。沖縄の夏野菜ゴーヤーを好きな人も多いです。ゴーヤーを使った代表料理は豆腐や豚肉と炒めたゴーヤーチャンプルーに尽きるでしょうが、実は個人的にはあの独特の苦みは苦手です。

夏の高級魚といえば真鯒(真ゴチ)です。必ず夫婦一対でいる仲のいい魚だそうで、どちらか一方が釣れると他方も釣れるとか。高タンパク、低脂肪で、その上甘みのある白身魚の刺身は冬の味覚フグのテッサも凌ぐうまさです。高価な魚ですから、刺身はプロの手に委ねることをお勧めしますが、煮付けや塩焼きが家庭料理の定番で、唐揚げもいいです。岡山ではアラを茹でて身をほぐし、味付けして熱々ご飯で「コチのかけ飯」にするそうです。土用の入りのご馳走といえば、ビタミンAやDがたっぷりのウナギの蒲焼に及ぶものはありません。白焼きもいいですが、蒲焼はやはりタレ付け、それも継ぎ足し継ぎ足しで培われた各店自慢のタレが炭火にこぼれて煙となり、蒲焼にいっそうの風味を施します。というわけで、ウナギの蒲焼だけは専門店へ行きましょう。中学校・高等学校時代に、親友の一人が住んでいた芦屋市茶屋之町のお宅によくお邪魔しました。何が楽しみと言って、いつも出される出前の鰻丼も目当ての一つでした。鰻料理専門店「割烹三佳」の今も変わらぬふんわりとろける蒲焼はニキビ面の少年時代を思い出させてくれます。ごちそうさまでした。

(2020.7.1)