広報誌HOPE Plus

事業管理者のつぶやき

Chapter124.大紐育、NYC

市立芦屋病院事業管理者 佐治 文隆

アメリカ映画の都といえばハリウッドのあるロサンジェルス(LA)と誰もが思い浮かべますが、実はニューヨーク市(NYC)もアメリカ2大映画都市に含まれています。スタジオ撮影中心で製作されるLAと異なり、NYCではロケ撮影が多いのが特徴で、その理由としてエンパイヤ・ステート・ビル、セントラル・パーク、自由の女神を望むバッテリー・パークなど見どころ、撮りどころ満載が挙げられます。古くは「キング・コング」が、新しくは「めぐり逢えたら」のトム・ハンクスとメグ・ライアンが登場したエンパイヤ・ステート・ビル、「クレイマー・クレイマー」「オータム・イン・ニューヨーク」「ある愛の詩」など多数の映画に使われたマンハッタンのオアシス「セントラル・パーク」など、シーンが目に浮かび、テーマ音楽が聞こえてきそうです。オードリー・ヘプバーン主演「ティファニーで朝食を」の宝飾店ティファニー本店もニューヨーク5番街です。

NYCの観光、ワクワク感をぎゅーぎゅーに詰め込んだ映画が、1949年製作の「踊る大紐育(大ニューヨーク)」で、ジーン・ケリー、フランク・シナトラなど大スターが出演しています。24時間の上陸許可が出た3人の水兵の恋愛と騒動を描いたミュージカルで、大ヒットしました。この映画の原題が「オン・ザ・タウン(On the Town)」で、作曲家レナード・バーンスタインが最初に書いた舞台作品として1944年に初演されています。今夏、バーンスタインの弟子である佐渡裕さんが、兵庫県立芸術文化センター毎年恒例の佐渡裕プロデユース・オペラの第15回にこの作品を取り上げました。

佐渡さんプロデユースのこれまでのオペラとは趣を変え、むしろブロードウエイ・ミュージカルを観るような舞台です。ストーリーは24時間休暇でNYCに上陸した3人の水兵ゲイビー、チップ、オジーが、それぞれ彼女を見つけて繰り広げる歌と踊りとドタバタが、市内各所を背景に展開します。2幕17景と短時間で目まぐるしく場面転換がなされ、息もつがせず進行します。クラシックなベルボトムのセーラー服がカッコイイ水兵たち、少しレトロなドレス姿の婦人たちが駆け巡る舞台は、1000通を超える書類選考、ロンドンでのオーディション200人以上から選ばれたキャストだけあってさすがに芸達者でした。

「On the Town」では出演者全員が白人男女という構成に、最近のアメリカのテレビドラマを見慣れた私はやや違和感を感じました。もっとも時代背景が1940年代で、オリジナルに忠実な脚本とあれば当然かもしれません。というのも、最近話題になったドキュメンタリー映画「ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス」(2017年)で、移民など人種の多様性やマイノリティを認める真剣な議論を見たせいかもしれません。89歳の巨匠フレデリック・ワイズマンの長編ドキュメンタリーは、NYC有数の観光スポットであり、世界最大級の図書館の舞台裏をあきらかにし、運営に関わる議論や図書館の課題を見せて、「公共性」「民主主義」を観客に問いかけてきます。このような巨大な図書館があり、政治的なメッセージも含めて多くの情報を発信しているところが、アメリカの強みかもしれません。ワイズマン監督は、「この図書館は、トランプ大統領が反対するすべての価値観を体現している」と述べているそうです。原題「Ex Libris – The New York Public Library」で、Ex Librisとは「~の蔵書から」という意味のラテン語で書籍の見返し部分に貼る書票だそうです。

(2019.10.1)