広報誌HOPE Plus

事業管理者のつぶやき

Chapter2. 地球温暖化

市立芦屋病院 事業管理者 佐治 文隆

総選挙で民主党が大勝した直後に、鳩山代表が温暖化(温室効果)ガス削減の中期目標について「マニフェストに掲げたとおり、2020年までに1990年比25%削減を目指す」と明言しました。これについて産業界はそろってブーイングの声を上げているようです。

その論調の多くは「経済活動が停滞する」「一般家庭にまで負担を強いる」あるいは「国益を損なう」などです。
また「ガソリン税などの暫定税率廃止や高速道路無料化などは排出削減に逆行する施策で矛盾する」とのもっともな意見も出ています。


しかし、地球規模で考えた場合、温暖化防止策は人類に有益であることに間違いありません。私は批判を恐れることなく、温暖化ガス25%削減目標は実行すべきだと考えます。
少なくとも高い目標を掲げて理想を追求することは、方向性を失って迷走状態にあったわが国の政治・政策を正すことになり、世界のオピニオンリーダーになれる可能性があるからです。

実のところ、本音ではこの期間での目標達成は難しいと思います。
しかし、達成可能な安全域を目標とするより、結果的には目標に至らなくとも、少しでもそれに近い値を出すことが出来れば、十分ではないかと考えるからです。万人が良いと考えることに、失敗を恐れてチャレンジしない手はありません。
イチローの大リーグ2000本安打、ボルトの世界陸上短距離3冠などの大記録は、不屈の挑戦から生まれています。
ここはひとつ、日本がイニシアティブをとって、アジアを、そして世界をリードしていくチャンスととらえては如何でしょうか。


ところで温暖化ガスとは、地表からの熱の放射を防ぎ、地球に温室効果をもたらすガスの総称で、二酸化炭素(炭酸ガス)、メタン、オゾン、フロンなどが含まれています。適量の温暖化ガスの存在は、地球の過冷却を防ぎますが、多量になると温暖化が進行し、異常気候、海面上昇などが懸念されるわけです。

温暖化ガスの排出量は二酸化炭素換算で表示されるなど、炭酸ガスは悪者扱いされていますが、医療の分野では重用されることも多いのが炭酸ガスです。例えば、低侵襲手術の代表である腹腔鏡手術では、手術野を確保するために必要な気腹(おなかに気体を入れてふくらますこと)に炭酸ガスが用いられます。
組織に速やかに吸収され、副作用も少ないのが利点です。酸素が用いられた時代もありましたが、発火するなどの事故が多発したといいます。


若い女性によく起こる過換気症候群は、過換気による炭酸ガスの過排泄によって血液中の二酸化炭素分圧の低下から起こります。治療法として、紙袋を口にあてて炭酸ガス濃度の高い呼気を再吸入して血中二酸化炭素分圧を補正するペーパーバッグ法が行われます。ここでも炭酸ガスは有用です。

温暖化ガスにしろ、炭酸ガスにしろ、何事もほどほど適量が良いということでしょうか。
衆議院で一人勝ちした民主党が、郵政民化で独走した自民党の轍を踏むことなく、過換気症候群に陥らないことを願っています。

(2009.9.10)